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February 8, 2018

星のひずみ

卯月
「虹が出るとみんなおしえたがるよ」 石垣りん
春の雨上がりといえば、空に初めて虹がかかるころ。そして、その仕組みはというと、端的にいえば、空の水滴が光に反射してみえるということ。ちなみに、それが七色かどうかは諸説あるものの、あの美しいグラデーションは、単純に色数には分割できないものかもしれません。もっとも、どの色が何色に見えるかは、科学の問題ではなく、文化的な違いによるところが大きいです。

皐月
「月日は白代の過客にして行かふ年も又旅人也」 松尾芭蕉
弟子の曾良を伴い、東京は深川(江東区)の芭蕉庵を離れ、松尾芭蕉が「おくのほそ道」へ旅だった旧暦の元禄二年(1689年)三月十七日(新暦の五月十六日)は、現在、「旅の日」となっています。由来はともかくとして、月日自体を永遠の旅人のようになぞらえる芭蕉のセンス。言いえて妙です。ゴールデンウィークも明けて、平日の十六日は旅こそ出来ませんが、この機会に、芭蕉の句に触れてみてはいかがですか。

水無月
「梅雨の月があって白い花」 種田山頭火
栗の収穫といえば、一般的にはモンブランが出回る秋のイメージかと思いますが、栗の花はといえば、意外にも、梅雨の季節と重なります。ただし、梅雨入り(別名、栗花落(ついり))を知らせる花ではあるものの、梅雨という時期も相まって、その雨によって散ってしまうという刹那的な花です。ちなみに、少し気が早いですが、モンブランのおすすめ店は、高円寺のラビリコチエです(賞味期限1時間)。

文月
「別るるや夢一筋の天の川」 夏目漱石
「乳をこぼした跡」ともいわれるミルキーウェイ(天の川)の、きめ細やかな星の群れが、夜空に美しくかかるこの時節。天の川を挟んで、こと座のベガが織り姫の星、わし座のアルタイルが彦星の星。気づけば、空の端から端まで、プラネタリウムに浮かび上がる星の数よりもはるかに多いのではないかと見紛うほどの満天の夜空(のはずですが、都会では、なかなかお目にかかれないかもしれません)。

長月
「秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七草の花」 山上憶良
萩(はぎ)、すすき、葛(くず)、なでしこ、おみなえし、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)。これらの、いわゆる「秋の七草」は、けしていちどきに咲くのではなく、秋の深まりとともに、少しずつ、花開いてゆきます。一口に秋といっても、様々なグラデーションがあり、それぞれの草花が、それぞれの秋の便りを届けてくれます。もとい、名もない花でも、季節を知らせてくれない花の方が少ないものです。

神無月
「もくせいのにほひが庭いっぱい。表の風が、御門のところで、はいろか、やめよか、相談してた。」
掲題の詩は、金子みすゞの「もくせい」より。つやつやとした常緑の葉に、橙色をした小花がたくさん咲き始める今日この頃。近くを通りがかると、すぐそれとわかるほどの甘い香りが漂います。ちなみに、原産国である中国では「桂花」と呼ばれ、「桂花茶」をはじめ、正月用の菓子である「桂花年糕」のようなキンモクセイの花の砂糖漬けや、花冠を白ワインに漬ける「桂花陳酒」等、飲食物としても利用されます。

霜月
「かへり花暁の月にちりつくす」 与謝蕪村
「かへり花」とは、この時期の穏やかな温い日(いわゆる、「小春日和」)に、梅や桜などの草木が本来の季節とは異なって咲くことをいいます。ひとが忘れた頃に咲くので、「忘れ花」といったいい方もされます。別名、「二度咲き」、「狂い咲き」。ちなみに、近年、しばしば、報じられるこの季節外れの開花は「不時現象(ふじげんしょう)」といわれ、各気象台でも観測記録がとられています。

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posted by 草森冬弥 @ 5:55 AM

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